GP Letter

2008.03.16

AUSTRALIA GP (Sunday)



外気温37℃、路面温度50℃の暑さの中の戦いは終わった...
ペースカーの登場回数の多い難しいレースを制したのは、
マクラーレン、そしてハミルトンであった。
最大のライバルと思われていたフェラーリ勢の不調もあり、
2008年最初の表彰台にはBMWのハイドフェルド、
そしてウイリアムズのロズベルグが自身初の表彰台に登った。
顔ぶれも新鮮だったが、何よりもニコのその嬉しそうな喜びようは、
僕らが長い間表彰台を見慣れていて、忘れかけていた感動を、
改めて良いものだと思い出させてくれた。


レースは終わったが、
ここからが僕らのもう一つの勝負でもある。
それぞれが1分、1秒を惜しみ撮りたての写真からセレクトし、
画像を開き補正を加え、サーバーにアップロードする。
「お〜い、○○の写真ないか?」
「あのクラッシュシーン撮った奴はいないか?」
「なんだ!この写真は?」
時として怒号が飛び交い、
フォトグラファーズ・ルームは殺伐とした雰囲気になることも。


そしてここまで急ぎの仕事が終わりようやく一段落、
僕の場合はここから、このブログを書き始めることになる。
通常のレース日の作業時間はレース終了後から6時間程度、
今日のように現地時間15時30分のスタートの場合は、
どんなに頑張っても11時頃になる。


ということは環境によっては晩ご飯は抜きという可能性もあり、
このままオーストラリアからマレーシアに移動する僕は問題ないが、
明日の朝のフライトで日本に帰るメンバーは、
朝の5時にはホテルを出なければならない...


レース終了後からまさに寝るヒマもなく、仕事を終え、
脱兎のごとくオーストラリアを後にするフォトグラファー達、
端から見ると楽しそうに思われるグランプリ・フォトグラファー、
その生活ぶりは現実にはタフでハードなものだ。


一年間で家族よりも多くの食事を共にするフォトグラファー仲間たち、
こんな暮らし相当変だと思うんだけど...(笑)

2008.03.15

AUSTRALIA GP (Saturday)



土曜日、昨日と比較すると10℃以上も低い気温で最高気温27℃...
それでも27℃なのだが、昨日の39℃を体感していると、
実に快適に感じるから人間とは不思議なものだ(笑)
そして明日はまたまた37℃という予想気温!
背中に80℃に達するという高熱のカイロのような
エンジンを背負って走るドライバーもだが、
サーキットを歩き回るフォトグラファーにとっても
また厳しい1日となりそうだ。


今日の予選の結果はある意味では予想通りと言ってもいいが、
BMWのクビサのフロントロー、
そしてトヨタの健闘ぶりが予想外に嬉しかったりもする。
ハミルトンは余裕のポールポジションに見えたが、
フェラーリのライコネンのマシントラブルが無ければどうだったろうか?
レースの展開としてはマクラーレンがトップで、
BMW、フェラーリが追いかけるという構図は面白い気がするのだが。


実は僕が今年一番期待をしているニコ・ロズベルグだが、
彼は中嶋の加入を自身にとって最良のプレッシャーとして巧く利用し、
冬のテストからこの開幕戦までコンセントレーションを維持し、
いい感じで仕上げている。
対する中嶋はチームメイトのニコを意識し過ぎたのかもしれないが、
だがあえて意識して、それでも相手よりも早く走れるようでなくては、
本当の勝てるF1ドライバーにはなれないので、ここはファイトだ!


そして残念ながら今年のスーパーアグリF1には、
昨年のようなミラクルは起きることなく予選Q1で終わってしまった。
しかしここまでほとんどテストをしていない、
いうなれば初めて走らせるようなマシンなので、
セッティングだけでも精一杯のはずだから、この結果は致し方ない。
明日のレースも何とかレースディスタンスを走りきり、
少しでも多くのデータを集めることが次へのステップだ。


僕にとって鈴木亜久里は被写体でもあり、また大切な友人でもある。
彼が初めてF1に乗ってから、現役を退いてレーシングチームを作り、
ようやくF1にまで上り詰めた一昨年、そして今日まで、
僕は彼のチームのメインフォトグラファーをずっと務めている。
今、パドックではそんな彼のチームに関して、
様々な憶測が飛びかっている。
しかし僕は鈴木亜久里の持つ強運を信じている一人でもある。
あれだけ頑張っているのだから大丈夫、きっと良い方向に進むはず、
そう信じ、僕ができる僕だけのこと、つまり最高の写真を撮ること、
僕はこのレースでもそれを実行するのみだ。


シーズン最初のレース、
こればかりは幾度経験してもワクワクするものだ、
世界の国々で様々な人が多くの思いや願いを込めた開幕戦、
だが決勝レースのスタートシグナルがこんなにも待ち遠しいのは、
いったいいつ以来だろうか?

2008.03.14

AUSTRALIA GP (Friday)



金曜日、いよいよマシンが走り出す。
F1マシンの排気音は近くにいると耳栓無しでは堪え難い程の轟音、
音は空気の振動だという事を改めて認識させてくれる。


今日、金曜日はフリー走行ということもあり、どのチームも良く走ってくれる。
これはフォトグラファーにはシューティングのチャンスが増え嬉しい事!
午前中の最多ラップはトロロッソのニューカマー、S.ボーデの32ラップ!
そしてライコネン、マッサのフェラーリ勢の25ラップと続くのだが、
一番気がかりなウインターテストに参加していなSAF1は、
琢磨とデビッドソンがそれぞれ7ラップと寂しいラップ数だが、
実は好調を伝えられているウイリアムズのロズベルグと中嶋一貴は、
何とたったの3ラップ!何かあったのか?
一瞬そう思ったが午後には30ラップを超えているので一安心。


フリー走行のトップタイムはハミルトン、そして地元のウェバー、
マッサ、コバライネンと続き、更にクルサードが続いて、
レッドブルの躍進が目につく結果となった。
残念ながら日本勢は中嶋が16位、琢磨が21位という結果。
パーマネントのサーキットとは異なり、ロードコースに近い路面状況で、
決してコースコンディションは良くない。
ダーティーでスリッピーな日本人が苦手なコンディションの中、
明日の予選で二人はどんな走りを見せてくれるのだろうか?


それにしてもオーストラリアでのF1はまさにモータースポーツの祭典、
既に火曜日辺りからサポートレースのイベントは始まっている。
もちろん今日もいくつかの決勝レースが行われ、
日曜のレース終了後にはコンサートなどのイベントも催され、
来る観客を飽きさせないようにという工夫が多く見られる。


このサーキットはメルボルンの中心部から車で10分程度の至近距離にあり、
本来なら公園であるアルバートパークの敷地内の道路を利用して開催されるので、
通常はゴルフ場のフェアウェイになる部分を自由席として解放していて、
この公園の中心には大きな池もあり、元々誰もが楽しめる環境だった。
従ってF1開催だからといってファン以外が楽しめない環境は許されず、
エンターテイメントとしての「F1グランプリ」という名のイベント、
これがオーストラリアGPでもある。

2008.03.13

AUSTRALIA GP (Thursday)


午前9時の気温が20℃。この時点では快適なのは間違いないが、
これから午後へ向かって気温の上昇がどうなることやら...
まあ基本的には太陽電池搭載の僕なので寒いよりは大歓迎なのだが。


通常のグランプリの木曜日の流れはこんな具合だ。
まずはサーキット入りして、メディアセンターにレジストレーション、
デスクを取り、ロッカーを借りて、インターネットの接続を確認して一段落。
ここまでで仕事の30%は完了(?)


その後夕方の斜光になる時間を狙って、
カメラを持ってピットやパドックを歩き撮影をする。
そしてすれ違う旧知のメカニックやフォトグラファー達としばしの談笑、
新しいカメラや、美味しいレストランのインフォメーション、
そして明日から始まるレースの情報交換などをする。


と、こんな流れが通常のグランプリの木曜日なのだが、
ここ開幕のオーストラリアは他とはちょっと異なる。
毎年開幕レースに備え、全ドライバーの体重測定があり、
その際にドライバーのポートレート撮影をする機会があるからだ。


今年は午後1時から3時までの2時間が体重測定に当てられた時間帯なので、
その2時間の間、ドライバーの写真を撮りたければポジションを決めて待つ。
早いフォトグラファーは2時間も前から場所取りをして待つ、
炎天下でも何ごとも無かったかのようにひたすら待つ。
そう、只待つ事だけがこの写真を撮る秘訣なのである。(笑)


なので待つ事が苦手というか嫌いな僕はこのイベントには参加しない。
だって誰が撮っても同じ構図にポーズ、作り笑顔のドライバーの写真なんて必要ないし、
撮りたくもないでしょ?(笑)
でもそんな写真が必要とされているフォトグラファー達もいるわけなので、
イベント自体には反対はしないけどね。
さあ暑さも本格的になってきた!そろそろガレージに行きますか。


P.S午後4時過ぎに気がつけば39℃という暑さ!どうりで暑いわけだ...

AUSTRALIA GP (Wednesday)


眠りから覚める時が来た...
2008年の開幕を今週末に迎え、成田から機上の人となり既に7時間あまりを経過し、
荒天のクアラルンプールのKLIAに到着した。ここは至って快適な空港なので、
ラウンジでくつろぎながらノンビリと原稿を書いている。
そう、今はまだ臨戦態勢ではなくどこまでも気楽な旅人風情なのである。(笑)


このあとしばしラウンジで時を過ごし、乗り換え到着する先はオーストラリア、メルボルンだ。
08年のF1グランプリの開幕戦の地、そして自身の22回目の開幕戦の地でもある。
開幕戦というものは何度経験を重ねても、常に独特の緊張感に満たされ心地良いものがある。
誰もが不安と期待で周囲をキョロキョロと観察するような、そんな気持ち。
鳩尾の辺りがこそばゆくなるような緊張感、始まるぞ!という期待感。
言い換えればF1グランプリに関わっていて良かった、そう思える瞬間でもある。


新しいチーム、ドライバー、そしてフォトグラファーの顔ぶれはどうだろうか?
テストを入れると年間に20回近く顔を合わす異国の友人、ライバル達。
その都度世界中から集まり、また世界中に散って行く特異な関係だが、
そんな中にも妙な同胞意識は芽生え、開幕で姿を見ないと妙に気になったりするものだ。


F1グランプリ史上最悪と僕が思う07年シーズン、何もかもが吐き出された訳ではないが、
それでも多くの犠牲の影で多少の前進はあったと期待を込め僕はメルボルンに向かう。
皆様、どうか今シーズンも懲りずに僕の言いたい放題のブログにお付き合いの程よろしくお願いします。