GP Letter

2006.09.11

ITALY GP Sunday


「現役引退」


スポーツ選手ならばいつかは向き合わなければならない、
避けることのできない道程。


大輪の花を咲かせ、散り往くサクラのごとくあっさりと現役を退く人がいる。
しかし道端の雑草のように風雨に晒され、人に踏まれても、
それでもひっそりとではあるが、逞しく咲き散っていく花もある。
どちらが良いとか悪いとか、そんな話ではない。
それは、どちらも真っすぐに生き抜いて来た証なのだから...


華やかなプロ・スポーツ選手の生活の裏には、
我々の想像を絶する苦労やプレッシャーがある。
良く言われる言葉に「プロは結果だから...」というのがある。
もちろんプロとして対価を得ている訳だから、
何らかの結果は求められてもやむを得まい。
しかし時に、目に見える結果だけで判断されることもあり、
実力を発揮できぬまま去らなければならない人もいるのだ。


マイケルの引退を遅いという意見があれば、
いや、まだまだできる!という声もある。
僕は引き際の良い引退だと思う。


7回、それはおそらくこれからも破られることは無いと思われる、
ワールドチャンピオンのタイトル獲得数。
そしてそれ以外にも、ありとあらゆるタイトルを手にいれ、
「皇帝」という彼の敬愛するサッカー界の往年の名選手、
ベッケンバウアーのニックネームを受け継いだ。


充分ではないか...
というよりも充分過ぎるではないか。
周囲がこれ以上彼に何を求めようというのだろうか?
F1デビューのスパ・フランコルシャンから、
引退を発表したモンツァまで、撮り続け、
昨年のオフには彼の写真集をフランスで出版した僕だが、
もしも直接声をかける機会があったなら、
一言「お疲れさま」とだけ言いたいと思っている。


そして残された3レース。
彼のF1での最後の時を僕なりに残しておきたいと思う。
「チャンピオンのまま引退」、それが彼に相応しいフェアウェルだと思うから...

2006.09.10

ITALY GP Saturday


昨晩は雷雨があり、天候は荒れ気味だった。
しかし一夜明けると、天気予報に反して青空が見えていた。
セッションが始まる頃には、全面に青空が広がり、
それとともに気温も上昇の一途を辿り、
午後の予選開始時にはあっさりと30℃を超えてしまった。


このレースで僕の注目はもちろんアロンソとマイケルだが、
二人とも何がなんでも相手よりも前のグリッドが欲しいに決まっている。
しかし、往々にしてこんな時には伏兵が現れるもの、
案の定、この予選もそんな伏兵に足をすくわれる形で始まった...


開始早々、SAF1の山本左近が赤旗を出し、
各チームのタイムアタックのタイミングを微妙に狂わせた。
最終的にはこの計算外の赤旗が、
微妙に最終セッションまで影響を与えたように思えた。


どれだけ燃料を搭載して、どのあたりのグリッドを狙っているのか?
まさにお互いの腹の探り合い、そんな様相の今の予選だが、
結果から見れば、マクラーレンのK・ライコネンがポール・ポジションを獲得、
3番手には前週のテストから絶好調のBMWザウバーのN・ハイドフェルド、
そしてもうひとつのフロントロー2番手には、前戦トルコで窮地に追い込まれたものの、
最後の望みをこのモンツァに託す、マイケルが入った。


マイケルの後は当然アロンソと思いきや、F・マッサが割って入り
結局アロンソはこの後ろ、5番手のグリッドからのスタートとなる。


モンツァのメイン・ストレートは広めではあるが、
その後の1コーナーの飛び込みがタイトで、
毎年必ずと言ってよいほど、アクシデントが起きる。
スタートからマイケルとアロンソが1コーナーでセーフティー圏内まで辿り着けるか?
この辺りが明日のレースの焦点になろう。


ヨーロッパ・ラウンド最後のレースでもあり、
マイケルのイタリアでのラスト・レースになるかもしれない明日のレース。
このレースが終わればタイトル争いを含め多くの事が明らかになってくる...
マイケルの去就、あるいはドライバーの移籍、
全ての駒が動き、収まるものは収まる。


頭では判ってるつもりでも、感情的には複雑なものがある。
明日がマイケルのフェラーリでのイタリアGPでのラスト・ランだとしたら...
明日は僕も思いの全てを込めて、マイケルと対峙したいと思う。

2006.09.09

ITALY GP Friday


*本日の写真は鈴木亜久里氏の誕生日につきスペシャルです。


気温30℃を超すイタリア、モンツァ。
湿気も多く、まるで日本の残暑のような気分...

しかし、サーキットには新風が吹いた!
S・VETTEL(ベッテル)若干19才。
新風は前回のトルコGPの金曜日にBMWザウバーのサード・ドライバーとして
F1初走行、堂々とトップタイムを記録。
その走りは関係者の視線を集めた。


そして今回のイタリアGPでも今日金曜日に見事に午前、午後を通して、
トップタイムを記録した!
もちろん、サード・ドライバーであるので、
エンジンやタイヤの制限はレギュラー・ドライバーとは異なり、
イコール・コンディションでは無いので、単純に比較する訳にはいかないが、
それでも並みいるベテラン・サード・ドライバーを尻目に、
連続のトップタイムは見事だった。


このオフの目玉はGP2のネルソン・ピケ・ジュニアかハミルトンと思われていたが、
ここにきてベッテルの株が急上昇、
このオフの注目株に躍進だ。


トルコGPでインタビューの様子を撮影したが、
19才の青年らしさと、以外なほどの落ち着きぶりを持ち合わせているベッテル、
F1取材歴20年の直感として、「逸材」であることには疑いはない。
しかし、何よりもF1のドライブを心から楽しんでいるのがこちらにも伝わり、
そこに好感が持てた。


今後の活躍が楽しみだが、
F1という一筋縄ではいかないこの世界、
その狭間に飲み込まれないことを願いたい。


現在のF1において、
特に上位チームでは金曜日はほとんどレギュラー・ドライバーの出番はなく、
メインはサード・ドライバーとなってしまう。
そこで来期は金曜はテスト走行日として、
レースのフリー走行から除外するという提案もある。


高い入場料を払って来た観客がサード・ドライバーの走りだけを見て帰る、
そんな理不尽な話は無いだろう。
興行的にも、関係者としても2日間のグランプリ開催に僕は大賛成である。
集中して良いレースを見せられれば、自ずと観客は集まるはずだから...

2006.09.07

ITALY GP Thursday


おそらくF1に関係する全ての人が好きな国の一つであろうイタリア。
そして今週はそのイタリア、ミラノからほど近い、
公園と緑に囲まれたパルケ・モンツァにあるアウトドローモ・ナショナル・モンツァ、
ここが決戦の舞台となる。


今年まではサンマリノGPという別称で、
同じイタリアのイモラでもレースが開催されていたが、
どうやら来期からは1カ国、1開催の原則に則るようで、
イタリアGPは純粋にここモンツァだけになる。


「ティフォシ」は日本語に訳すと「熱病に冒された人」みたいな訳になるが、
ここイタリアでは、転じて熱烈なフェラーリ・ファンのことを指す。
そして、その「熱病」ぶりは半端ではない。


当然のごとく、グランプリの週は休みを取り、
キャンパーにそれこそ何ダースものビール・ワイン、何キロもの肉を積み込み、
サーキットには週明けから入り、キャンプ・スペースを確保する。
そんな彼らが金曜日のフリー走行を待てるはずもなく、
たらふくビールを飲み、バーベキューの炭焼きの肉を頬張りながら、
フェラーリの将来についてこれまた熱く語るのだ。


そんな彼らの会話に耳を傾けてみよう...
「オレが監督だったら、マイケルは何が何でも来期も走らせるよ!」
「マッサも頑張ってるけど、やはりライコネンに期待かな?」
「いや、ライコネンは要らないね!」
まあそれぞれに勝手なことを言ってるのだが、
誰に害を及ぼすわけではないのでご容赦を!


さあ明日の金曜日、彼らの意見はどうだろうか?
フェラーリのチャンピオンはあるのだろうか?
いや、尋ねるまでもなく「フェラーリはチャンピオンだっ!」
きっとそう答えるに決まってるのだけど...